« 思考が止まった!思考が始まった! | トップページ | 是安のこと(2) »

2011年9月27日 (火)

是安のこと

20代後半の頃、そろそろ自分のやりたいフリーなアプローチを演奏中に少しずつ表現するようになっていた。

是安と一緒に演奏するとお互いに演奏中にフリーなアプローチへ移行する中でやたらとテレパシーを感じて通じ合うという感覚を味わっていた。

そこには今までにないワクワクした新鮮な喜びが起きていた。

「おまえもそう感じてるんだ、それを喜んでいるんだ、その世界が好きなんだ、そっちに行きたいんだ」。
口には出さないけどそんな事を感じて嬉しかった。

一緒に演奏すると嬉しい共感があるから、ライブの後に是安の家にも招かれて嬉しい時間を過ごした覚えがある。

自分がギタートリオを始めてしばらくすると僕がやっているライブハウスに是安が現れて「何故俺とやらないんだ?」と怒鳴り込まれてしまった。

是安の投げてきた直球には驚いたけど、もうわかっていたから嬉しかった。

そうして30代始め頃に是安とドラムの藤井信雄さんとのトリオが始まった。

是安の無邪気で人なつっこい性格が羨ましかった。
その頃自分はまだ一人で自分や他人とどこかしら闘っていたから「近寄りがたい」と言われたり「怖く見えて腫れ物にさわるようだ」と言われたり。

是安とやるようになって自分は徐々に本来の自分を取り戻していった。
少しずつ自分らしく無邪気になれた。

そうこうするうちにサックスの榎本のグループでやる事になると、そこには是安がいてドラムの楠本さんがいた。

この世界に入ってこんなに無邪気にのびのびと楽しく好きに自分らしくやれたバンドは自分には始めてだった。
このグループでの数年間はやればやるほどクリエイティブで通じ合い自由を満喫していた。
お互いの音楽的関係は密度を増していった。

今度はそこから楠本さんと是安とのギタートリオが生まれていた。

この頃になると自信もついてきて音楽的により前に進みたいという思いが強くなっていた。
自分へのこだわりもいっそう強くなっていくしよりフリーに移行していきたいという力みや生みの苦しみを背負いながら演奏していた。

今思えば先に進みたいという過剰な思いから演奏には辛い部分が生じてどこか無理が起きていた。

そうこうしているうちに是安の酒の量は以前より増えていった。

けれど是安はいつも一生懸命であり前向きで優しかった。
そしていつも手を抜かないで全力投球。

私の独りよがりで強い思い込みは時にトリオの演奏をちぐはぐにしていて私がどんな演奏をしても一生懸命誠実に答えようとしていた是安はこの頃になると自分の至らないせいではないかとやる度に神経を擦り減らして傷ついていたような気がする。

そして酒の量はますます増えていった。

思い出すと是安の優しい顔が浮かんで涙がでてくる。

|

« 思考が止まった!思考が始まった! | トップページ | 是安のこと(2) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 思考が止まった!思考が始まった! | トップページ | 是安のこと(2) »