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2011年9月28日 (水)

是安のこと(2)

相変わらず是安の酒の量はゆっくりと増え続けていた。
自分のトリオは方向性が見えないまま演奏にはムラがあり時に乱暴でちぐはぐな演奏が続いていた。
しかも自分の中では音楽的方向がフリージャズというよりフリーインプロビゼーションへと強く向かっていた。

でも好きな是安とはやり続けていた。

是安は相変わらず本気で手抜きはいっさいなし。
死闘しているかの如くベースを鳴らしていた。

この頃になると是安は歌手のシューミーにとってもすでに最も信頼するベーシストで大切な相棒にもなっている。

是安をこよなく愛する林栄一(サックス)さんのスタンダードという作品のレコ発ツアーで名古屋に行く頃には是安の言動や演奏があきらかに変だという事にみんな気づきだしていた。
名古屋では是安から「僕を助けてくれ」と涙ながらのSOSを告白された事がある。
仲のよいミュージシャンは私を含めてみんなして是安に酒を止めるよう言うようになっていった。

しかし事件は起きた。
肝臓で倒れそして病院でのアルコール依存症という宣告。
その直後から是安は復活をかけて二度と酒を飲まないよう強い意思で戦っていたと思う。
その苦悩と苦労はアルコール依存症になった者でないかぎりは想像つかないだろうしはかり知れないと思う。

しかしまたしても身体に災難が起きる。
酒を断ったかわりにタバコが増えての心筋梗塞。
是安は自身に襲いかかった二度の大病に強い意思で立ち向かった。
そして打ち勝った!打ち勝った!。
見事に克服し続けていた!
普通の人間にこれほどの強い気持ちと意思があるとは考えられない。

復活した是安はゆっくりと無理をせず用心深そうに、しかも以前にも増して誠実にベースを弾いていた。
一年二年とたつうちに徐々に音の中に豊かさと優しさが溢れてきていた。
第二の素晴らしい是安がゆっくりと始まりだしたのだ。
酒を飲まなくても楽しそうに話しだしたり。
私はそれが心から嬉しかった。
いつしか豊かで優しい是安の音に触れることが以前にも増して最高の喜びになっていた。
演奏におけるタイムや音の位置、そんなやり取りの共感と喜びは以前より明らかに理解と親密さを増していた。
きっと是安も同じだったと思う。

いつしか是安は再びみんなから必要とされ望まれる絶対的な存在のベーシストになっていった。
だから自ずとライブも演奏旅行も増えていった。
そんな是安を見ていて心から嬉しかった。


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